近年、多くの企業で求人広告の費用対効果が悪化しているという声が聞かれます。
広告費を抑えながら、自社にマッチした人材の母集団を形成したいと考える担当者も多いのではないでしょうか。こうした状況において、「SNS採用」は有効な選択肢の一つと考えられます。
中でも、総務省の調査によれば、20代の91.1%が「X(旧Twitter)」を利用しています。高い拡散力とリアルタイム性を併せ持つXは、特に若年層へアプローチするうえで重要なチャネルといえるでしょう。
※参照元:総務省「令和5年通信利用動向調査」
目次
X(旧Twitter)採用とは
「X採用」とは、企業や採用担当者がXの公式アカウントを運用し、投稿や広告を通じて求職者を惹きつける採用手法全般を指します。
主な取り組み方には、日々の投稿で企業文化や求人情報を発信する「アカウント運用」と、特定のターゲット層へ向けて広告を配信し、短期的に応募を促進する「広告出稿」の2種類があります。
他のSNSとの違い
X採用の最大の特徴は、「リアルタイム性」「拡散力」「検索性」の3つを兼ね備えている点です。これにより、企業の「今」を伝えながら、潜在層への認知拡大から応募獲得までを一気通貫で行える可能性があります。
SNS | 主な年代 | 拡散手段 | 適した採用目的(例) |
---|---|---|---|
X | 20代〜30代 | リポスト・検索 | 潜在層への認知拡大、イベント告知 |
10代〜30代 | ハッシュタグ・発見タブ | 企業文化のビジュアル訴求、ブランディング | |
20代後半〜40代 | 職務経歴の共有 | 専門職・ハイクラス人材のスカウト | |
30代〜50代 | シェア・コミュニティ | 経験者採用、リファラル採用 | |
LINE | 全世代 | 1対1のチャット | 選考連絡、内定者フォロー |
X採用を始める前に準備すべき3つのこと
- ① ターゲットとペルソナの設定
まず、「誰に情報を届けたいか」を明確にすることが重要です。採用したい具体的な人物像である「ペルソナ」を設定しましょう。例えば「25歳のiOSエンジニアで、フルリモート勤務を希望し、オープンソース活動に関心がある」のように、詳細に設定することで、発信するメッセージが具体的になります。
- ② KPIと目標の設定
次に、活動の成果を測るための指標(KPI)と目標値を設定します。「フォロワー数」「インプレッション数(表示回数)」「エンゲージメント率(反応率)」「クリック率」「応募件数」といった指標を段階的に管理すると、運用の評価がしやすくなります。例えば、「半年でフォロワーを1,000人獲得し、応募10件、採用1名につなげる」といった具体的な目標を立てましょう。
- ③ 社内体制とガイドラインの整備
担当者が複数人いる場合は、誰がいつ投稿するのか、どのような表現は避けるべきか(NGワード)、投稿前の承認フローはどうするか、といったルールを明文化したガイドラインを策定します。ドキュメントとして共有することで、担当者による品質のばらつきや、意図しないトラブルを防ぐことにつながります。
X採用のメリット・デメリット
Xで採用を行う4つのメリット
- 高い拡散力
投稿がリポストされることで、フォロワー以外のユーザーにも情報が広く波及します。
- 低コストでの運用
アカウントの開設や投稿は無料のため、広告を使わなければ人件費のみで運用可能です。
- リアルな情報発信
社員の日常や率直な声を届けることで、企業のリアルな雰囲気を伝え、候補者の共感を呼びます。
- ブランディング資産
継続的な運用で獲得したフォロワーは、企業のファンともいえます。アカウントが育てば、採用以外の広報活動にも活用できます。
Xで採用を行う3つのデメリットとリスク
- 炎上・誤情報の拡散リスク
不適切な表現や誤った情報が瞬時に拡散され、企業のブランドイメージを大きく損なう「炎上」のリスクが常に伴います。対策として、投稿前のダブルチェック体制の構築や、24時間体制でのコメント監視、緊急時の対応フロー策定が不可欠です。
- 継続的な運用の負荷
成果を出すためには、最低でも週に数回の定期的な投稿が推奨されます。コンテンツの企画や作成、投稿後の反応の確認など、運用には相応の工数がかかるため、担当者の負荷が大きくなる可能性があります。投稿カレンダーを作成したり、チーム内で役割を分担したりして、負荷を分散させる工夫が必要です。
- 文字数制限による表現の制約
Xの無料版では、1投稿あたりの文字数が140文字(全角)に制限されています。多くの情報を伝えたい場合は、複数の投稿を繋げる「スレッド機能」を活用したり、有料プラン「X Premium」に加入したりする必要があります。
Xで採用を始める5のステップ
- Step1:目的設定とペルソナ策定
まず、採用活動全体の課題から、X採用で達成したい目的を「半年でエンジニアを1名採用する」のように具体的に定めます。次に、その目的に合致するペルソナを作成し、チームで共有することで、投稿内容やコミュニケーション方針に一貫性を持たせます。
- Step2:アカウント開設とプロフィール最適化
ユーザー名は「会社名_採用」のように、採用アカウントであることが一目でわかるものに設定します。プロフィール欄には、企業のミッションやビジョン、そして「DM(ダイレクトメッセージ)での質問も歓迎します」といった文言を盛り込みましょう。採用サイトなどへのリンクを「固定ポスト」に設定することで、応募への導線を明確にできます。
- Step3:投稿計画と運用ルールの整備
運用初期は、週3回程度の定期投稿を目安に計画を立てます。投稿テーマや担当者をカレンダーに落とし込み、計画的に運用しましょう。また、炎上リスクを避けるため、投稿前の承認フローやNGワードリストといった運用ルールをドキュメントにまとめておくことが重要です。
- Step4:初期フォロワーの獲得
アカウント開設直後は、まず社内の従業員にフォローとリポストを依頼し、初動の拡散を狙います。同時に、企業の公式サイトや担当者のメール署名にXアカウントのURLを記載するなど、あらゆる接点でアカウントの存在を告知し、地道にフォロワーを増やしていきましょう。
- Step5:効果測定と継続的な改善
投稿後は、Xに標準で備わっている分析ツール「ポストアクティビティ」を使い、インプレッション数やエンゲージメント率を週次で確認します。例えば、「投稿に画像を添付したらインプレッションが伸びた」「投稿時間を夕方に変更したらエンゲージメント率が上がった」といった仮説検証を繰り返し、自社アカウントの「勝ちパターン」を見つけ出すことが成果への近道です。
魅力的なコンテンツを発信するためのヒント
投稿テーマを体系化する
ネタ切れを防ぎ、継続的に投稿するためには、あらかじめ投稿テーマの「型」を用意しておくことをおすすめします。「社員のデスク周り紹介」「新人の失敗談と学び」「社内勉強会の実況」「社長の1日密着」など、様々な切り口のテーマをリストアップし、カレンダーに割り振ることで、計画的な運用が可能になります。
画像・動画・スレッド・スペースを使い分ける
Xでは、テキスト以外の多様な表現が可能です。画像はタイムライン上での視認性が高く、動画は職場の雰囲気を伝えるのに適しています。長い説明が必要な場合は、複数の投稿を繋げるスレッド機能が有効です。「結論→詳細→応募導線」の順で構成すると、情報を整理して伝えられます。また、音声配信機能であるスペースを使えば、リアルタイムで求職者の質問に答えるオンライン座談会なども開催できます。
ハッシュタグを戦略的に活用する
ハッシュタグは、自社の投稿をまだ知らないユーザーに見つけてもらうための重要な手段です。「#社名採用」といった独自のタグと、「#26卒」「#エンジニア募集」といった一般的なタグを組み合わせることで、ターゲット層への到達率を高められます。ただし、多すぎると宣伝色が強まるため、1投稿あたり2〜3個程度に絞るのが効果的です。
DMやリプライで候補者との距離を縮める
一方的な情報発信だけでなく、候補者との双方向のコミュニケーションを大切にしましょう。DMで問い合わせがあった際は、迅速かつ丁寧に対応することで、候補者の不安を解消し、信頼関係を築くことができます。投稿へのリプライ(返信)も、24時間以内の返信を目安にすると、誠実な印象を与えられます。
社員を巻き込んだ運用を心がける
採用は全社で行うものです。社内に「採用ツイート共有チャネル」などを作り、投稿直後に社員へ共有して「いいね」やリポストを促す運用は、投稿の初速を高める上で非常に効果的です。社内での協力体制を築くことが、X採用を成功させるための重要な要素となります。
X採用の成功事例
株式会社ニコン
カメラ・光学機器メーカーのニコンは、合同説明会、セミナーの告知といったものから就活に活きるアドバイスまで様々な内容を投稿しています。
テキストだけの投稿だけでなく画像を用いて視覚的にもわかりやすく発信している点が特徴的です。
※参照元:ニコン 採用担当 公式Xアカウント
株式会社集英社
出版社の集英社は、新人編集者の日常や仕事への想いを、外部ブログサービス「note」で連載し、その更新情報をXで共有しました。
社員のリアルな声を届けることで多くの共感を呼び、Xアカウントのフォロワーを大幅に増やすことに成功した事例です。
※参照元:集英社 採用担当 公式Xアカウント
新光重機株式会社
建設機械のレンタル・販売を行う新光重機は、自社の重機と時事ネタを組み合わせたユニークな画像投稿で話題を集めました。堅いと思われがちな業界イメージを覆す親しみやすい投稿が、企業の認知度向上と応募数の増加に貢献しました。
※参照元:新光重機株式会社 公式Xアカウント
湘南美容クリニック
同クリニックの採用アカウントは、匿名で質問を送れる「質問箱」を活用し、候補者からの疑問に丁寧に回答する姿勢を見せています。これにより、候補者との心理的な距離を縮め、内定承諾率の向上に結びつけていると考えられます。
※参照元:SBCメディカルグループ(湘南美容クリニック) 新卒採用担当 公式Xアカウント
SNS運用代行サービスの活用
もし、社内のリソースだけでX採用を継続的に運用することが難しい場合は、専門の運用代行サービスを活用することも有効な選択肢です。代行サービスは、投稿コンテンツの作成や24時間監視といったリスク管理、効果測定レポートの作成などを請け負ってくれます。
これにより、採用担当者は面接や候補者との対話といったコア業務に集中しやすくなります。
まとめ
X(旧Twitter)は、「拡散力」「低コスト」「リアルタイム性」という3つの特徴から、採用活動において非常に強力なツールとなり得ます。まずは、本記事で紹介したステップを参考に、採用目的とペルソナを設定し、専用のアカウントを開設することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、週に数回の投稿を継続し、データを見ながら改善を繰り返し少しづつ改善を行っていきましょう。
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